探偵と興信所の教科書−探偵と興信所の仕事、基礎知識。探偵を目指す人すべての入門書

プライバシーを扱う探偵としての倫理

●漏れれば一生が台無しになるような、特殊な情報を扱うのが探偵の仕事
探偵は、依頼王のプライバシーに触れる仕事です。依頼人は、親や兄弟、
もしくは配偶者にすら言えないことを探偵に話すのですから、秘密の厳守
は当然です。
これは基本の中の基本ですが情報は、知り得る人が多ければ多いほど、漏
れる可能性も高くなります。
現場で動く探偵には、被調査人の情報は必要最低限しか知らされません。
氏名すら、知らされません。
私も経験がありますが、現場で働いているときには、なぜもっと情報を教
えてくれないのか、疑問に思っていました。尾行にしろ、張り込みにしろ、
もしくは聞き込みにしろ、依頼者の背景をよく知れば、もっと効率よくで
きると思うからです。
しかし経営者になった今は、必要最優しか教えない理由はわかります。
情報は、知っている人が多ければ多いほど漏れるものだからです。
外部の探偵に仕事を依頼するときには、なおさら慎重な依頼が必要です。
私は、優秀で信頼できるごく少数の探偵としか付き合っていませんが、そ
れでも、依頼主のプライバシーには慎重になります。
時々、依頼内容が書かれた「案件書」を持ち歩いて調査を行う探偵がいま
すが、「案件書」は、絶対に持ち歩いてはいけません。どんなに注意して
いても、電車の中に置き忘れたり、紛失したりすることがあるからです。
どんなに優秀な探偵であっても、そうした事故は起こるものです。
「案件書」の内容は頭の中に入れ、「案件書」は厳重に保管しておくべき
ものです。
また、不必要になった書類は、必ずシュレッダーにかけて廃棄するべきで
す。
探偵が他の職業と違う最大の点は、依頼主(顧客)のプライバシーに触れる
ことです。
昨今、顧客情報の漏洩が問題になっています。これは、顧客情報に価値が
あるからです。だから漏らす人がいます。多くの職業は営業行為を必要と
し、営業行為には、顧客名簿などの顧客情報が有用だからです。
ただ、漏れた顧客情報が、1件1件、そのまま悪用される例はあまり聞き
ません。
銀行や信販会社の顧客情報には、収入や借入状況など、きわめて重要な情
報が含まれていますが、それでも、漏れたからといって、1件1件脅追が
行われた、という話は聞きません。
悪用するなら、高く転売するか、漏らした銀行や信販会社に高い買い取り
を要求することが多いようです。
探偵は違います。
探偵が触れるのは、漏れたら、そのまま脅迫に使われてしまうような個人
情報です。
漏れたら依頼主の一生を台無しにしてしまう可能性すらある個人惰報―大
げさではなく、探偵が触れるのは、そのぐらい重要な個入情報なのです。
情報は、知る人が多ければ多いほど、漏れる可能性が増します。これは忘
れないで下さい。

【探偵こぼれ話】
依頼主とターゲットは、どっちが大切?
ごく普通の企業に勤めるサラリーマンが、取引先の女性と恋愛することは
決して珍しくないはずです。
また、大切なクライアント先の女性と恋愛にからむトラブルを起こして、
取引に大きな影響を与える例もあります。
探偵と依頼主の関係も、人間関係のひとつです。依頼主と恋愛関係にな
る場合もあります。
とくに、探偵は依頼主のプライバシーに触れる職業であり、依頼主も心
を開いて話をしなければいけない関係にあります。
そのため、感情移入してしまいがちな職業であるともいえます。
だからこそ、他の職業よりも、依頼主(顧客)との関係に一線を引くこと
が大切な職業であるともいえます。
もちろん、プロである以上、たとえ感情移入してしまったとしても、そ
の行動を起こすのは、調査が終わってからです。
優秀な探偵ほど、きちんと一線を引くものです。 
また探偵業で特徴あるのは、ターゲット(調査対象者)との関係でしょうか。
基本的な尾行調査がそうですが、調査の過程で、探偵がターゲットと接触
することはまずありません。
しかし、ターゲットを見続ける職業です。
これが、以外にターゲットに対する微妙な感情を生むことにもなるので
す。
こちらは、ターゲットのことを知っている。しかも、プライバシーに触
れることを。
ところが、ターゲットは自分(探偵)の存在を知らない。探偵が自分を追
っていることなど、想像すらしません。
探偵は、依頼主のトラブルを解決する職業ですが、これは「正義」とは微
妙に異なります。
あくまでも依頼主の側に立った正義であり、一般的に見れば、ターゲッ
トのほうに正義があることもあるのです。
探偵は、依頼主のことを考えて調査結果の一部を隠すこともありますが、
ターゲットのことを考えて、依頼主に対して調査結果の一部を隠すこと
もあります。
調査の途中で、依頼主の依頼がストーカー目的であることが分かった場
合は、もちろん調査結果を隠します。
そうではなく、もっと微妙なこともあるのです・・・。